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哲学マンガ「オムレット」作者のブログ
by hirumas-omelet
憲法は、政府に対する命令である。
ちょい前のエントリーで太田光の対談のことを書いたが、その対談が速攻で新書になってましたね。

「憲法九条を世界遺産に」

前回のエントリーでは「三流読書人」さんの紹介の紹介で、いいとこだけ抜粋して読んでたのですが、その対談よりさらに長いこの新書では、けっこう「内輪話」的なノリが多くなっていて、右翼的な考えの人に対して、では説得性があるのか?といったら、ちょっとな〜、という感じ。あくまで左派的なインテリが、みずからの拠点を確認するのに、非常に啓発的な書であるということになるでしょうか(まあとくにオウムに関する中沢氏の「いい分」にはまったくうんざりだな)。

さて、それに対して「憲法は、政府に対する命令である。 」という本は説得性において、格段に素晴らしい。
「憲法は、政府に対する命令である。 」

タイトルに端的に示されているように、憲法は、政府に対する命令である。

これは、これまでの国会論戦などでも民主党から自民党の改憲論に対する批判として「自民党は憲法がそもそも何なのか分かっていない」という形で語られてきたし、人文系の学問的な流れの中では小室直樹さんの「憲法学」の本などでも語られていて、よく知られた議論だと思うのだが、あまり知られていない、あるいは国民の身にしみていない論点だったと思う。それを「骨肉」のものとして展開してくれたのが、この本であり、まさに爽快な感じがした。

改憲派の「押し付け」論を、一蹴するこの一言。「憲法は、政府に対する命令である」んだから、押しつけであって当り前。

それを「押しつけだから変えよう」というのは、政治家の単なるエゴであり、それに付和雷同する国民は自分の手で自分の武器を手放し、自分の首をしめるバカだということになる。

また、この本では、国家とは何かということが、たんなる左派的な観点からではなく、私もよく引くところの「べしみの論理」をも含めた観点から語られている。
必読の書といっていいだろう。

(べしみの論理については私の下記論考を参照)
「世の中」って何なんだ〜!?

「私がべしみになった理由」号

追記
この本でも語られているが、憲法を変えるということは、九条の改正といった部分修正にとどまらず、ようするに憲法の根本を変えてしまう事、すなわち、国家体制の変更となる可能性が極めて大きい。国家体制の変更とは革命ということだが、もしポスト小泉=安倍シンゾー一派によって、これがなされるならば、それはマスコミを利用したクーデターのごときものになる可能性が非常に高い。

すでにシンゾーらは、「公約」の中に「憲法改正」を含ませているという報道がなされている。とすれば、すでにシンゾーの次期政権が「当確」した段階で、まるで後出しじゃんけんのように「憲法改正」を追加し、それは「公約」だったのだからという理由で、まさに今回の靖国参拝のように実行され、マスコミもまたそれを是とするというシナリオが用意されていることは確実だろう。このような射程を含めて、われわれはもっと真剣にシンゾー政権を阻止するということを考えるべきではないだろうか。

追記2
トラックバックをいただいた「きまぐれな日々」さんのエントリー「池田香代子さんの「やさしいことばで日本国憲法」」によると、日本国憲法は押し付けといっても、すでに(戦前からの)日本人にさまざまな試案、たたき台があったということである。それがなければ、アメリカといえどもたった一週間で「理想の憲法」など作れるはずもなかったと。
このような歴史的な経緯をみても「押しつけ」ではなく、改憲論者の単細胞な論理を突き崩すものとなっている。これは本エントリーでふれた「憲法はそもそも押しつけ(命令)」という論と両輪となって、憲法を守ろうという運動の軸となる考え方だろう。
このへんの議論は、先の太田光と中沢の対話では、ちょっと「奇跡のような…」という文学的表現への逃げが目立ったので、こういう根拠のある話を加えてほしい。というか、太田光には中沢でなくて、まさにここで紹介されている池田さんなどと対話してほしいものだ。すべては編集者の勉強不足という事につきるのだが。。
さて、それはさておき、「きまぐれな日々」さんにトラックバックしている「斜46°」さんのブログにおける目から鱗の憲法というカテゴリーは、憲法が権力を縛る「命令」であることを詳細に書いています。これも必読資料です。こうして徐々にでも憲法についての認識が広がって行くのはうれしいことです。
by hirumas-omelet | 2006-08-19 00:58 | 臨場哲学の辺縁
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